何といっても態変30周年記念公演としての今『Over the Reinbow−虹の彼方に』公演。
ABCホールを選んだだけの甲斐もあって、800完売には手は届かなかったにしても、これまでの態変自主公演では670観客動員という数は最高峰になった。
そして同時開催での写真展もギャラリー風ロビーで開催でき、終演後で祝いの乾杯をできる嫌味のない洒落た雰囲気が非常によかった。実は楽屋がホールと隔絶されているため、そこが毎公演後での観客との唯一の歓談の時間も合わせ持っていた。
舞台は1時間20分ぐらいの作品で、パフォーマーは色ととりどりのレオタードに身を包み、横7メートル奥行きもほぼ同じステージを所狭しと、座り・寝転がり・立ち、と蠢くものにした。
ここでやりたっかのは、態変の身体の持つ多様な特性を、-変性-と提示することである。
宇宙人の視点を持ってすれば、物事は不確かなものだらけで、以前からあった規定されたものは解体し意味をなさなくなる。しかし一つだけの星の宇宙人ではなく、いろんな星からのそれも選りすぐりの悪と捨てられて来た異星人たちならば、生き残るサバイバルはどんな価値基準も一度はゼロにリセットされなければならず、それは同時に構築が始まらざるを得ないというスリリングな地球がその現場となるということ。
これにはやはり、音楽の持つ役割が重要である。
山本公成のジャズユニット生演奏での威力だったと思う。それは、宇宙に流されず現実を直視する覚めた切り込みで、グイグイと攻める一騎打ちと、大いに楽しんだ。公成だからできたこと。今回のサバイバルには欠くことのできない好敵手だったと思う。
そして最後の行進は、気の遠くなる道のりを、虹の橋を渡るならばそれも楽し。苦楽の表裏一体を我々は、異星界の何宇宙人でも変わらぬ原理の上を、只未来を見つめて歩むのだが、そこに照明家三浦あさこの腕が光る今回ほど、その策に脱帽した。それほど脅威の照明をほどこしていたのである。