9月2日、フェスティバルホールへ、(モーリス・ベジャール振付)シルヴィ・ギエムの「ボレロ」を観に『東京バレー団50周年記念ガラ』へ行って来た。大阪ではこの日1回限りの公演だった。
この作品はモーリス・ベジャール振付発表が、ジョルジュ・ドンで踊られた「ボレロ」としてあまりにも有名だ。私は、それを有名にさせた『愛と悲しみのボレロ』の映画で何回か観ていて、この踊り手とこの作品が大好きだ。しかし、ジョルジュ・ドン本人がエイズで亡ったのはもうかなりなるが、ジョルジュ・ドンが生前に踊るのは観ることはなかった。
シルヴィ・ギエムが、来年の12月に引退する、とつい先だって公表した。
以前情報誌イマージュに、態変の劇評を寄せた上念さんが、少しシルヴィ・ギエムのダンスと態変の身体表現に言及されたことがあった。それで一つの縁を感じ、今回のギエムが東京バレー団で来日し「ボレロ」を踊るのを見つけたので、私は後悔しないように大急ぎに予約を入れ、観に行くことにした。
5つ程の作品が用意された、東京バレー団50周年記念ガラとしての演目の一番最後を飾る、シルヴィ・ギエム「ボレロ」だった。
シルヴィ・ギエムは小柄な女性でジョルジュ・ドンはバレーをやる男性の独特なしっかりした身体。実はこの作品が好きなだけ疑心暗鬼で観に行くことにしたのだ。が、これが!やはり凄く、良かった!!のだ。ギエムの中性的な感じがより作品性を際立たせ、踊りの形もきっちりと、かと言って形式お化けだけでなく自分の髪を邪魔になったら束ねて振ったり、感情に頼らないで身体と自己の必然をきっちり織り込むアドリブがクラシックバレーではない即興性を感じさせ、そこに内面としての魂の踊りが伝わってくる圧倒的迫力と説得力であった。私は、思わず、本当に不意に、涙が出そうになった。ジョルジュ・ドンの踊りを映画で観た時も、そうだったのを思い出した。
フェスティバルホールに詰め掛けた、大入り満員の聴衆全てが、その踊りに魅せられた。スタンディングオベーション鳴り止まずで、本当に数えきれないくらいギエムは出てきてくれた。ダンサーが観客層に占める割合は多いと思われた人々は、終演で席を立って帰る姿には、感激の晴々とした涙を拭いながらの人は多かった。
シルヴィ・ギエムの「ボレロ」、本当に凄いものを観た、と言った感じだ。引退前に来日公演が、大阪であれば、是非また観に行きたいと思うほど。