私が身障者の身体そのままで身体の表現をやることになる、閃きを得た西表島。
そんな貴重な出会いがあって以来、何度も西表には訪れてはいたが、今回行くことになった「節祭」(シチ)という祭事があったことは、西表からは縁遠くなった最近まで全く知らなかった。
だが、知ってからは自分の人生で一度は、行きた「節祭」(シチ)の祭祀だった。
それが、2017年3月の態変新作公演タイトル『ニライカナイ-命の分水嶺』としたのは一昨年(2015年)11月、今回2016年11月の「節祭」に行くようになるとは、作品タイトルを付けた段階には夢にも思わなかった。
だが私の中で沖縄から受けたものが、長年に渡り態変表現で渦巻き、今回いい具合にドッキングするに至った。八重山にあるニライカナイの思想をよく表す「節祭」との遭遇が実現する機会を、連合いの夏休暇をここで取ろうという提案で、私の人生最大の出会いをこんなにも早くやらせてもらることとなったのだ。
「節祭」(シチ)は、一年間の豊作への感謝と翌年の五穀豊穣、住民・集落の繁栄を祈願する祭事だ。同年月日に八重山諸島各地で執り行われ550年間連綿と村中を上げ取り組まれてきた、神と村人が一つになる所謂、村興しの大事業として大切にされ。
その祭事は3日間に及び昨年は、11月13日に前夜祭のようなものから始まり、14日が正月で祖納の前泊浜で古式ゆかしい豪華な衣装を身に着け、昔から続いてきた祭祀が執り行われる。それを参列者は浜を取り囲むように作られた道路をこの日は通路止めにしそこに、用意されたテントが張られ中に長テーブルと椅子が用意された所に収まりご祝儀を出し、弁当が配られ泡盛やビールで見物する。
兎に角、11月といえども西表は灼熱の太陽の照りつける夏日。
この日祖納の美しい景観の前泊の浜は、節祭では「船元の御座」と呼ばれ、神聖な特別な場所となる。
浜での節祭のお正月は、次から次へと一群が組になって繰り出し、行列で登場する。
遥か海の向こうからお迎えする福をもたらすミルク(弥勒菩薩)様がいて、アンガー行列、男芸人衆や、ハーリー船競争、獅子舞、それらが太陽のもと村人総出の出で立ちは、紅型の着物の正装だったり黒い衣装に身を包んでいたり、と、髪も化粧も古代からの正装でビッシと決め、それはもう豪華な一大絵巻が展開されるさまなのだ。
午前11時半から始まり終わったのが午後4時頃まで、一番のお天道様を浴びる時間帯で5時間にも渡って執り行われる。